傾いた盃


不安定が止まりません。感想などくれるとうれしいです。製作者 明
by spectator1
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カテゴリ:季節( 1 )

鉄棒お化けと桜の季節

(このお話はフィクションです)

小学校から中学校になるとき、僕は不思議な体験をした。あれが夢だったのか現実だったのか今でもわからない。ひょっとすると、僕はずっと夢を見ていたのかもしれない。それほど不思議な体験を僕はしたのだ。
桜が咲き始める季節だった。僕は無事小学校の卒業式を終えていた。今年は例年に比べて気温が低いらしく、いつもは満開のはずの桜の花はまだ蕾のままだった。
小学校を卒業した僕だったが、いまだにできないことがあった。僕は運動音痴で、特に鉄棒に関してはまるで駄目だったのである。そのせいで、こんな歳になってもまだ逆上がりの一つも満足にできなかった。
僕は、どうにか中学校の入学式の前に逆上がりをマスターしようと決心した。そのため逆上がりができるまで大好きなゲームを封印し、好きなお菓子を我慢することにした。
そして僕は逆上がりの特訓をし始めたのである。
春休みに入って最初の日。その日は快晴だった。太陽の光がさんさんと僕を照らしていた。風はまだ少し寒かったが、太陽のおかげで僕の体はぽかぽかしていた。
 僕は一目散に小学校の校庭に行った。校庭にはあちらこちらで遊んでいる人たちの姿が見えた。    
「おーい、ヒロ、お前もこっち来て遊ばないかー。」
僕は友達に呼ばれた。
「ごめん、今から鉄棒の練習するんだ。」
「お前が?」
「うん、逆上がりができるまで練習するんだ。」
僕がそう言うと、友達は皆いっせいに笑った。
「お前、鉄棒苦手やろ。練習したって無駄だって。」
そう言ってまたいっせいに笑った。
 「うるさいなぁ、そんなんやってみないとわからないだろうが!」
「ったく人がせっかく誘ってやったのに断りやがって、お前なんか鉄棒お化けに食べられちゃえばいいんだよ。」
友達たちはうるさいと言われて怒ったのか、少し声を荒げて僕に言ってきた。僕は相手をするのが嫌になったので黙って走っていった。
そして、そのまま校庭の隅のほうにある鉄棒に行った。
 校庭の隅には大きな桜の木があった。僕がよく登ったことのある木だった。この桜の木に登ると町がよく見えた。僕はその景色がなんとなく誇らしかった。
 僕はその桜の木が大好きだった。
 しばらく桜の木を見て僕はさっそく鉄棒に取り掛かった。その鉄棒は高さが三段階に分かれているどこにでもある鉄棒だった。
 僕は必死になって逆上がりの練習をした。気が付くと桜の木の影が僕を覆っていた。太陽は沈みかけ空は茜色に染まっていった。校庭にはもう僕以外誰もいなくなっていた。僕はさっき友達の言っていた鉄棒お化けの噂を思い出した。その噂では鉄棒お化けはかなり昔からいて、一人で鉄棒をしていると、どこからともなく現れ、その鉄棒をしている子供を攫って行くという僕のいた小学校に伝わる七不思議のひとつである。
ざわざわ そのとき一際大きな風の音が響いた。
 僕は怖くなったので、後ろを振り返らず一目散に家に走っていった。風の音が大きく聞こえ、なんだか自分の足音が他人のもののように感じられた。
 それでも、なんとか家にたどり着き、すぐに布団に入った。途中でお腹が空いたので、台所にいってご飯を食べた。お風呂は怖かったので入らなかった。
 次の日、僕は朝シャワーを浴びてから、学校に向かった。
 学校にはすでに昨日と同じようにいたる所にちらほらと人がいた。僕は迷わず鉄棒のほうに向かっていった。
途中で後ろから声を掛けられた。
 「おいヒロ、昨日はすまなかったな。馬鹿にしちまって、お詫びにお前の練習手伝ってやるよ。」
 昨日馬鹿にしてきた友達たちが言ってきた。
 僕はそれを喜んでお願いした。なぜなら昨日の練習でたいした成果が得られなかったからである。だからできる人に聞いたほうがより早くマスターできると思った。
 そして僕らは鉄棒へと向かっていった。
 僕は昨日と同じように鉄棒に取り付き逆上がりをしようとした。結果は昨日と同じで、どうしても途中で体が上がらなくなり、そのまま落ちてしまった。 
 「もっと丸くなるみたいに回ってみろ。」
 「くるっと回るんだってば。」
 皆いろいろ言ってくれた。
 だけどいくらやってもうまく逆上がりはできなかった。そのうちに日が落ちてきた。
 日が落ち始めると一人、また一人と帰って行った。気が付けば校庭にいるのはまた僕一人になっていた。
 僕は何度も地面を蹴り上げ逆上がりしようとしていた。だけどやっぱり逆上がりはできなかった。
 「君、本当へたくそだね。」
 突然後ろから声がかかってきた。僕は鉄棒お化けかと思い少し驚きながら振り返った。
 そこにいたのは僕と同じくらいの少年だった。僕は拍子抜けしながら言った。
 「君は鉄棒お化けかい?」
 「鉄棒お化け?君は僕がお化けに見えるのかい?」
 「…見えないね。」
 「だろ?それにしても君凄い鉄棒苦手みたいだね。逆上がりすらできないんだからさ。」
 「仕方ないだろう、鉄棒苦手なんだから。」
 「それにしたって低学年だって逆上がりぐらいできるぜ。」
 「君には関係ないだろう。というか何で僕が逆上がりの練習してるって知ってるんだよ。」
 「そりゃ、あんな大声で言われちゃ聞こえるよ。」
 どうやら僕と友達のやり取りを聞いていたらしい。
 「それに昨日もここで練習してて何してるんだろうってずっと思ってたからね。」
その子は小馬鹿にしたような表情で言ってきた。
「でも君凄いよ。そんな歳まで逆上がりができないなんてさ。それにさっきからずっと見てたけど一回も成功してないもん。」
「できないもんはできないんだよ。しょうがないだろ!それにそう言う君は逆上がりできるのかい?」
僕がそう言うとその子は鉄棒まで来て、おもむろに鉄棒を握ると、一気に回った。凄く上手だった。
「どうだった?」
その子は意地悪げに微笑みながら言った。
僕は急に悔しくなってきた。何でこんなやつにここまで好き言われなきゃいけないんだと思う気持ちもあったが、それ以上に、凄く上手に逆上がりを見せ付けられて、自分が何も言い返せなくなったことに対して悔しかった。
「君みたいなのがいくら練習しても無駄じゃない。」
「無駄なんかじゃない!練習すればきっとできるようになるよ!」
僕は少し意地になって答えた。
「へー、じゃあできるかどうか見ててやるよ。で、何時までにできるようになるんだい?」
「三日…、三日でできるようにしてやる!」
「わかった、じゃあできるかどうか俺が見ててやるよ。」
「望むところだ!」
こうして僕は約束をした。三日で逆上がりができるようにするという約束を。
その後もしばらく僕は練習していた。隣でもあいつが見せ付けるように時々逆上がりをしていた。本格的に暗くなり、練習ができそうになくなったので、僕は家に帰ろうとした。
隣であいつが僕に言ってきた。         
「今日はお別れか、じゃあまた明日な、言っとくが逃げんなよ。」
意地悪な笑みだった。
「逃げるわけないだろう。絶対三日でできるようにしてやる。」
そういって僕は家に帰っていった。
家に帰ってもあいつの憎憎しげな顔がずっと頭から離れなかった。
次の日、朝早くから僕は学校に出かけていった。
学校では友達がサッカーをしていた。彼らは僕の姿を見つけると、また鉄棒を教えてくれた。だけど最初からできる人にはなんでできないのかわからないようだった。周りを見回したが昨日のあいつの姿は見えなかった。
相変わらずみんなは日が暮れるとすぐに帰っていった。僕が一人で練習しているとまた後ろから声がかかってきた。
「どうだい、練習ははかどっているかい?」
「今日は来てないと思ったよ、しかし、…これを見てはかどっているというの。」
「いや見えない。」
「わかってるんなら聞かないでよ!」
「ははは、でもちょっとは上手くなってる気がするよ。」
「え?マジで!」
「うそ、あはは。」
なんなんだこいつは、昨日といい今日といい、僕をからかって、なんかだんだん腹が立ってきたぞ。
「なーなー。」
ふん返事なんてしてやるもんか。
「なーってば、無視はよくないぞー。」
僕はその声を無視して黙々と練習を続けた。 
「やっぱ、足が少しおかしいな。」
そいつがいきなり言ってきた。
「足ってなんだよ?」
「お前の場合足がぶらぶらしてんだよ。もっと綺麗に揃えなきゃ。」
そういってそいつは、手本を見せてくれた。
綺麗に弧を描いていた。
「な、こういう風にやるんだよ。」
僕はこいつの言う通りやるのは少し癪だと思ったが、正直行き詰っていたので素直にこいつの言うとおりに遣ってみることにした。
するといままで少ししか回れなかったのがあと少しでできるというところまでできるようになった。
ちょっとこいつがいい奴かもしんないと思った。
「しかし、この調子で後二日で出来るようになるのかね。」
 まるで、さも無理だろうという風に言ってきた。
ちょっといい奴かもしんないと思ったけどやっぱりやなやつだった。
「今日はもう無理みたいだな、こんなに暗くなっちゃ危ないし、さてあと二日で出来るようになるのかな、楽しみだなぁ。」
「出来るか、じゃないするんだよ!」
僕は少し怒りながら言った。僕も後二日でできるようになる自信が無かったからである。
「じゃあ僕は家に帰るよ。」
僕がそう言って振り返るとそこにはもうあいつはいなかった。ただ桜の花弁が少し落ちていた。そのとき僕は別に気に留めていなかった。
次の日も昨日と同じ事をしていた。
やっぱり最後には必ずあいつが残っていた。
なんだかんだいいながらあいつのアドバイスは的確だった。
「だからもっと勢いをつけるんだって、女だってもっと早いぞ。」
「うるさいなぁ、黙ってみてろよ。」
僕は言われたとおり勢いをつけてやってみた。
あと少しというところで出来なかった。
「だめだめもっとお腹つけるようにして回らなきゃ。」
そしてまた一気に回った。クルリ
僕は見事に一回転して逆上がりをしていた。
「何だやればできるじゃねぇか。」
僕は何が何だかわからなかった。ただ気分が高揚していた。できたんだ、僕は逆上がりが出来たんだと。
「ありがとう。」
何故かお礼の言葉が出た。
あいつは少しきょとんとしていたが、照れくさいのかほっぺたを掻きながら言ってきた。
「これで完璧にできたと思ったら大間違いだぞ。まだ一回しか成功してないのにな。」
「望むところだ明日には完璧さ。」
「まあ、いいや明日を楽しみにしてるぞ。」
「あ、もうこんな時間か、そうだ付き合ってくれたお礼に家によっていかないか?」
僕がそう言って振り返るとあいつはまたいなくなっていた。ただ桜の花弁が落ちていた。
そして約束の三日目が来た僕はいつもどおり学校に行って練習していた。そして空が少し茜色に染まった頃あいつがやってきた。やっぱりいつあいつが僕のそばに来たかわからなかった。
「どうだい、完璧にできるようになったかい?」
「まあこれを見なって。」
僕はそう言うと鉄棒につかまり一気に回った。見事な逆上がりだった。
「どうだい、すごいだろう。」僕は得意げに言った。
「うん凄いね、よくあれから三日で出来るようになったもんだよ。」
「まぁ…お前が教えてくれおかげもあるけどな。」
「俺は何も教えてないよ、君が自分で出来るようになったのさ。」「だな、僕にかかればこんなもんさ。」
「…前言撤回やっぱ俺のおかげだな。」
僕とそいつは同時に笑いあった。こんなに気持ちよく笑えたのは初めてだった。
「しかし真っ暗だなぁ。そろそろ僕帰るよ。…また会えるかな?」僕は何となくもう会えないような気がしていた。
「多分もう会えないよ。お前が鉄棒出来るようになったしな。俺の役目はお終いさ。」
「そうなんだ…、じゃあさよな…またね。」
僕は笑顔でそう言った。
「ああ、またな」
そいつは照れくさそうに言った。
そして消えていった。地面には桜の花弁が残されていた。僕には何となくあいつが桜の化身のような気がした。蕾だった桜が満開に咲いて僕を見下ろしていた

それからあいつには会ってない、鉄棒のところに行っても誰にも会えなかった。あれはなんだったんだろう?自分の生みだした夢だったのだろうか。あれから長い年月が経ちいまや自分は一児の父になっていた。
今日は小学校に子供を迎えに行ったところだった。
「お父さん、鉄棒お化けって知ってる?」いきなり息子に聞かれた。
「鉄棒お化けがどうかしたのかい?」
「今学校で噂になってるの、鉄棒お化けってのが。…あれ?父さんなんで笑ってるの?」
私はいつの間にか笑顔になっていたらしい。
まあいい、これから帰ったら話してあげよう子供時代に起こった不思議な体験を、もちろんあいつの悪口をたっぷり付け加えて。
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by spectator1 | 2005-03-09 22:00 | 季節


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